沈香について

2019年03月28日 15:22

日本では香といえば沈香、と言われるほど代表的な香木の一つに沈香があります。沈香とは日本独特の呼び名で、古代インドのサンスクリット語【agaru】の意味、【重い、水に沈む】ことから付けられています。実際に沈香の原木を水に浮かべると比重が重いため沈んでしまいます。水に沈む香木、つまり「沈水香木」と呼ばれることが、沈香の由来となっています。

沈香は白檀のように原木そのものが香るわけではなく、その木がもともと持っている樹脂が木質に沈着し、芳香を放つように変化したものです。変化する前の沈香の元木は水に沈みません。

沈香がどのように発生するか、というのは現在でも明確にはなっていません。樹幹や枝に生じた傷や微生物などによる病害の部分に自然に滲出した樹脂が木質に沈着したのち、枯死あるいは地中に埋もれるなど、様々な自然条件のもとで偶然に育まれたものではないか?というのが現状です。また、二五〜六〇年以上生きてきた老木でないとこの沈着は生じないのです。

そのため、沈香を採集するというのは条件が多岐にわたるため、一筋縄では行きません。土中を掘り起こしたり、病気の木を探したり、人工的に傷をつけて長時間放置したり、といったどうしてもカンや偶然という心もとない方法に頼らざるを得ないのです。

 

沈香の呼び名には大きく分けて2種類、「シャム沈香」、「タニ沈香」があります。

産地によって呼び名が変わり、「シャム沈香」はベトナム、カンボジア、タイなどで採取されたものを指します。

タニ沈香はインドネシア、マレー半島、スマトラ島などで採取されたものを指します。

香りの特徴に違いがあり、シャム沈香は、清涼感、甘みが際立ちます。タニ沈香は辛味苦味が際立ちます。

これら2種類の沈香がさらに、香りの強さや特徴、見た目などで様々なランクに分れます。

安価なものでは1g数十円、高価なものでは1g4000円以上と、かなり幅があります。

一般的に「シャム沈香」の方が高く取引されています。

 

ここで、注意していただきたいのが、沈香に対する日本国内の基準や世界基準がありませんので、各香木店が各々で独自に沈香の呼び名、ランクを定めているということです。

例えば、インターネットで売られている「アルティメットプラチナクラス」の沈香と、京都老舗香木店の「SSランク」が必ずしも同等ではない、ということなのです。

また、今回私がお話ししている「シャム」「タニ」という分類も全ての香木店に通用するわけではありません。ですので、沈香には「甘みが際立つもの」と「辛味苦味が際立つもの」の2種類があるんだなあー、、、程度に認識していただければと思います。

 

 

沈香は基本的に長期間地中、もしくは水中で熟成されるほど良い香りを放ちます。

一般的に良質とされる沈香は100年から150年もの間、熟成されたものです。ですので、良質な沈香ほど稀少価値が高くなっています。現在、天然物が減少の一途をたどっているので、ドリルで穴を空けたり沈香化促進剤を注入するなどして人工的に沈香を栽培することも行われています。それに伴って沈香に関する詐欺が横行しておりますので、沈香を購入する際はくれぐれもご注意ください。特に、「見た目が黒い」、「水に沈む」、といったことは沈香の香りの良さには一切関係ありません。この、沈香の購入に関しての注意事項はまた改めてご説明させていただきます。